2026/03/25
  • 人事労務管理

【人事管理】社員の私物、退職時に慌てないための備え

退職した社員のロッカーに私物が残っている。
休職期間の満了で退職になったが、荷物を取りに来ない。
解雇後、連絡がつかないまま私物だけが職場にある。
どの会社でも起こり得ることですが、対応を誤ると意外に長引く問題になります。

 

まず押さえておきたいのは、机やロッカーは会社が管理している業務設備だという点です。会社には事業場を管理する権限があります。業務に関係のない私物が増えすぎている場合、持ち帰りを求めることは可能です。
これは「雑然と放置された物が見苦しい」という美観の問題というより、管理の問題です。

・避難経路や防火上の安全
・情報管理
・スペースの有効活用

こうした観点から、私物を「必要最小限」にしておくことは合理的な判断であると考えます。

そして重要な点は、在職中に私物を適切に管理していると、退職時のトラブルは小さくなるということではないでしょうか。物が少なければ、返還や送付の負担も軽くなります。

 

また、退職最終日に出勤していない解雇や休職期間満了の扱いは少し注意が必要です。
無断欠勤後の解雇であっても、休職期間満了での退職であっても、雇用契約が終了するという点では同じです。そして、私物はあくまで元社員の所有物ですから、会社が自由に処分できるものではありません。

 

さらに見落とされがちなのが、労働基準法第23条です。
この条文は、退職時に「労働者の権利に属する金品」を請求から7日以内に返還することを求めています。一般には賃金などを想定しますが、実務上は労働者の所有物も含まれると解されています。(労働法コンメンタール)
つまり、「荷物を返してほしい」と求められた場合、速やかな対応が必要になります。

ここで後回しにすると、労務トラブルとは別の論点で問題が広がることがあります。実際には、「荷物を勝手に処分された」といった事情が、会社への不信感を強めることも少なくありません。

 

では、どう備えるべきでしょうか。
特別なことは多くありません。

・在職中から私物を最小限に管理する
・退職時の引き取り手順を決めておく
・通知や、やり取りの記録を残す

なお、休職に入る時点を想定するならば、「復職しない前提」で荷物をすべて持ち帰らせる必要はなく、最小限に整理することを促します。これは、長期不在が見込まれる場合に整理を求めることは、あくまで管理上の対応として説明できます。

 

社員の私物は、小さな問題に見えるかもしれません。
しかし、法令への配慮と管理の姿勢が問われるテーマでもあります。
日常の運用を少し整えるだけで、退職時の負担とリスクは確実に軽くなります。
この機会に、自社のルールと実務を一度見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

【コンサルタントプロフィール】


大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

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