コンサルタントコラム

【人事管理】採用内定と内定取り消し

企業の採用活動は、このところ売り手市場が続いていますので、良い人材の採用には苦労をされているのではないかと思います。そんな中、今回は採用内定と内定取り消しを取り上げたいと思います。


1.内定を通知する方法

採用選考の結果、採用が決まり内定をだす場合は、採用担当者が電話で連絡をする企業が多いようです。そしてその後に内定通知を書類にして郵送したり、電子メールなどで通知するケースが多いと思います。通知方法は、入社後の期待を伝えられるように企業の特色に合わせた方法を選んでいると思いますが、内定を取り消さざるを得ないことが起きてしまうような事例を想定すると書類の郵送が望ましいと考えています。


2.内定を取り消さざるをえないときには

入社日までにやむなく内定を取り消さざるを得ないときがあります。企業は、募集から採用内定まで時間をかけて慎重に判断をしていますから、たびたびおこるわけではありませんが、内定決定のときに知ることができなかった事実が起こってしまうことがあります。

ところで、採用内定を出してから取り消しができるかどうかについては、内定者と雇用者との間に労働契約が成立しているかどうかによって判断がわかれます。ある会社の内定取り消しについて最高裁判所が判断した例では、企業が内定通知を出した時点で労働契約が成立するという判断をしました。(最2小判昭54・7・20)

したがって、内定通知を出した段階で労働契約が成立したとすると、内定取り消しは、解雇ということになります。そうすると、解雇は客観的に合理的な理由を欠いて、社会通念上相当だと認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となりますので、内定の取り消しは、慎重に判断しなければなりません。
【解雇に関する参考資料】厚生労働省パンフレット「労働契約法のあらまし」25頁
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/dl/13.pdf

また、新規学卒者の内定取消しは、「新規学卒者の内定取消し通知書」をハローワークおよび学校の長に提出しなければなりません。(職業安定法 則35条2項)
以上のように内定者に対して事業主から採用内定を取り消すことは、慎重に行うことが求められています。これは、内定取り消しは新規学卒者の就職機会を妨げ社会に与える影響が大きいことからです。
このため厚生労働大臣は、内定取消し内容を公表することができることになっています。これは、学生などが適切な職業選択ができるように採用内定取消しの情報提供をすることを目的にしています。 (職業安定法 則17の4)


3.内定通知書に記載する項目

内定通知書に記載することは、一般的には次にあげるような項目になるでしょう。
1)提出を求める書類の名称…入社誓約書や身元保証書など

2)書類の提出期限…提出が遅れる場合を想定し提出期限を伝える

3)内定取り消しをする事由…入社誓約書の提出がない場合等の取り消し事由を限定する。参考までに一般的に考えられる事由と記載の例は、

① 入社日までに学校を卒業しなかったとき
② 入社の際に必要と定めた書類の提出がなかったとき
③ 病気やけがなどにより正常な勤務につけない状況になったとき
④ 入社に際して提出された書類に虚偽の記載があったとき
⑤ 内定のときには想定できなかった経済状況の悪化によって、人員削減の必要が生じたとき
⑥ あなたについて内定のときには知ることができない事実がわかったとき
というような限定されたものになると考えます。

以上を踏まえたうえで内定を通知しますが、総合的には入社を希望されたことへの感謝と、入社後の活躍の期待が伝えられる内定通知がよいでしょう。

 

 

【コンサルタントプロフィール】

写真_大関ひろ美 大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

DATE : 2017/05/26

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