【労働時間管理】労働時間について①
労働時間とは何を指しているのだろうか
政府がかかげるテーマの一つに「働き方改革」があります。少子高齢化社会への対応、女性の積極活用、働く人の健康問題、所得格差の問題、企業の生産性向上などさまざまな視点から語られるようになりました。労働時間の短縮やテレワーク等が考えられるようですが、そもそも労働時間とは何を指しているのでしょうか。
1. 労基法が定める法定労働時間
労働基準法(以下労基法といいます)には、労働時間、休憩、休日、有給休暇について定めたものがあり、第32条から第41条までで、さまざまな規制をしています。企業が労働者に労働させられる時間を一般には法定労働時間と呼び、次のように定めています。
●1日につき8時間
●1週間につき40時間
(常時10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の場合は、例外として1週で44時間)
尚、この労働時間数は休憩時間を除いた実労働時間で考えます。
また休日は、1週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。ここでいう1週間とは、会社ごとに就業規則などで特別に定めていない限り、日曜日から土曜日の暦週をさします。(昭和63年1.1.基発1号)
2. 労働時間はどういう時間か
労働時間とは、一般には使用者の指揮命令下にある時間だとされています。
実は、労基法には、具体的に労働時間とは「こういう時間である」という定義が書かれていません。
唯一、坑内労働については、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までを休憩時間を含めて労働時間と見做す。(労基法第38条2項)と定めています。
そのほかに、労働時間の解釈の参考になる定めを見てみると、法定労働時間の規定条文に参考になる部分があります。
「使用者は労働者に休憩時間を除き一週間について40時間を超えて、労働させてはならない」(第32条1項)。
この規定から、使用者側から見れば、労働者に労働をさせる時間、労働を命じる時間を労働時間というと解釈できます。一方の労働者側から見れば、労働を命じられて働く時間と解釈できます。
また、裁判例では「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたと客観的に定まるものである。」と言及した例があります。
こうしたことから、労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間と解釈するのが妥当というのが一般的な解釈になっているわけです。
3. 就業規則で労働時間を指定する
使用者は労働時間に対して賃金を支払う義務があります。そうなると、労働時間が何時間なのかを合理的に判断する必要があり、使用者の指揮命令下にある時間かどうかを客観的に判断して、賃金を支払いことになります。
在宅勤務でも使用者の指揮命令下にあれば、労働時間だと考えられます。しかしながら、必ずしも明確に判断できないケースがあります。
まず、基本的な対処方法は、会社の所定労働時間の始業と終業時刻、休憩時間を就業規則で定めることです。そもそも、始業・終業の時刻などは、就業規則に記載しておかなければいけない項目のひとつです。一方で、変形労働時間制を導入するのであれば、一定の要件を満たす労使協定などの整備が必要です。
4.法定外の時間外労働時間
そして、始業時間よりも早く出勤することや、終業時間を超えて労働することを命令した場合など、いわゆる時間外労働時間も使用者の指揮命令下に行なわれた労働であれば労働時間です。
そこで、時間外労働に払う割増賃金について労働基準監督署から指導を受けたり、未払の割増賃金の支払いを社員から申し入れられた場合等は、まず労働時間数を正しく計算することから始めます。使用者と労働者の双方の解釈に違いがある場合は、問題が大きくなるケースがみられます。
次回は、労働時間とするかどうかを事例で解説したいと思います。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2016/10/25