【人事管理】職場のラインルールを決めていますか
職場単位の連絡ツールにライングループを利用することは多いと思います。
ライングループは、参加している社員へ一斉に手早くメッセージ送信ができるので大変便利です。
いつでもメッセージを送信できる利便性がある一方で、ルールを決めておかないと社員の精神的な負担を増やしたり、労働時間が長くなったり、時間外割増手当の未払いが発生につながる問題があります。
1.労働時間にあたるケース
勤務時間の管理方法は多様化していますが、ここではテレワークや裁量労働制を導入せずに所定の始業時間に会社が決めた場所に出勤する労働者を前提に考えてみます。
就業規則で始業と終業時刻を定めている事業所で、出勤したのち終業時刻を終えて帰宅している社員に上司が労働を命じたときは労働時間になります。仕事を命じていれば労働時間ですし、労働時間の法規制については、「事業場を異にする場合においても労働時間は通算される」とあります(労働基準法第36条1項)ので、自宅を労働の場所ととらえた場合で、その時間と出勤時間を合算した結果1日の労働時間が法定労働時間の8時間を超えるときは、通常の賃金に加えて時間外割増の支払いも必要になります。
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【ケース】
上司が、ライングループのメッセージ等で、「明日のA社訪問に使う資料はどうなっているか返事を下さい。最新の資料を送ってください。」と指示していた。
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返信を強要しているために、このメーセージに返信をした各社員と資料をそろえて送信した社員Bさんに賃金を支払う必要があります。
このケースは、比較的判断がしやすいのですが、返信したBさん以外のライングループメンバーの状況に応じて判断する、いわゆるグレーな状況は多くあると思います。
【その他ケース】
① 返信投稿はしていないが受信メッセージを読んだ
(上司によっては長文メッセージのときもあります)
② 主担当のBさんは気が付いていないと察したCさんはBさんに電話した
(Cさんは電話で話し終えるまでの間、頭の中は仕事モードでフル回転しているときもあります)
③ 上司はこのようなメッセージを月に10回ほど送信している
(メッセージを読む時間は、1回あたりが短くても積み上げると長時間になることもあります)
メッセージを受け取った部下は、メッセージを読み、社員同士の横の連携で対応をしているかもしれませんから、表に出ないサービス残業をしている可能性もあります。
また、事例のメッセージは迅速に、かつ、必ず読むように指示をして、何らかの返信するように義務付けていいます。他にも顧客からもメッセージが届くような場合は、そもそも部下を長い間において手待ち状態にしていて、労働時間と判断することが妥当なケースもあります。
2.与えることが必要とされる休息時間を侵害している
労働者が日々働くにあたり、必ず一定の休息時間を取れるようにする、というこの考え方に関心が高まっていることから、厚生労働省が勧めているものに「勤務間インターバル」制度があります。「勤務間インターバル」とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保するものです。
帰宅後のライングループメッセージは、生活時間を中断することになり、休息時間を中断している場合があります。
パワーハラスメントの観点からも、上司が緊急度の低いにもかかわらずメッセージを何回も送信しているような場合は、「個の侵害」になると判断される懸念もあります。
尚、わが国では考え方が確立していませんが「つながらない権利」は、今後、重要視されてくるように思います。
3.職場のライングループメッセージ ルール
手軽に一斉に連絡が取れるグループメッセージですが、導入する場合にはルールを決めておくことが重要だと考えます。考慮したうえで、グループメッセージをやめたり、使用時刻を制限したうえで導入してもよいと思います。筆者が考える事項を挙げますので参考になればと思います。
① 終業時間後の送信は急を要する事項・重要性が高い事項にかぎる
② 翌朝でよい内容は下書きにしておき夜は送信しない
③ 重要事項であるが返信を必要としない内容は返信不要と明記する
④ ハートマークやイラストスタンプは誤解が生じるので使用しない
⑤ 内容が他者にのぞき見される可能性があり情報漏洩を常に気を付ける
⑥ 複雑性・重要性・時刻等内容に応じて電話等の別の手段を使う
⑦ 長文メッセージは避け簡潔にまとめる
⑧ 部下個人への指導は一斉メールで送信しない
⑨ 悩み事は送信しない 等
以 上
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2023/08/29