【人事管理】能登半島地震に伴う労基法や労働契約法等に関するQ&A
令和6年能登半島地震の発生により被害を受けられた皆様には心よりお見舞いを申し上げます。
被害を受けられた事業所において事業継続が困難になり、又は著しく制限される状況にあることから、令和6年1月19日付けで被災地の事業場及び被災地と取引関係にある事業所等における労働基準法や労働契約法等に関する一般的な考え方が厚生労働省からQ&Aとして公表されています。
なお、法令上の義務については、諸事情を総合的に勘案すべきものであり、具体的な相談などについては、お近くの労働局又は労働基準監督署にお問い合わせをお願いします。
さて、自然災害が、正確にいつどこで起こるかは予測困難です。幸いにも今回被災されていない地域の事業主様においても、事前の備えとしてご一読いただくと良いと思います。
令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A
厚生労働省(令和6年1月19日)
https://www.mhlw.go.jp/content/001186969.pdf
では、25ページ・31項目のQ&Aの中から「自然災害の影響に伴う休業の取扱い」に関する2項目を抜粋して紹介します。(以下の連番はQ&Aで用いられている番号です。)
Q1-4
災害により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
A1-4
災害により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合であっても、労使がよく話し合って、休業中の手当の水準、休業日や休業時間の設定等について、労働者の不利益を回避する努力をお願いします。
また、労働基準法上の休業手当の要否にかかわらず、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対しては、雇用調整助成金が、事業主が支払った休業手当の額に応じて支払われます。
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上) を支払わなければならないとされています。
ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。
ここでいう不可抗力とは、
①その原因が事業の外部より発生した事故であること、
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
災害により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。
Q1-5
災害により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていませんが、 取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たるでしょうか。
A1-5
災害により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。
ただし、休業について、
①その原因が事業の外部より発生した事故であること、
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
の2つの要件を満たす場合 には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられます。
具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、 他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられます。
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2024/01/23