【労働時間管理】労働時間について③ 時間外労働の上限について
前回のコラムに引き続き労働時間の3回目になります。今回は時間外労働の話です。
1. 法定時間外労働と所定時間外労働とは
時間外労働をさせたときは、一定の割増賃金を支払う必要があります(労基法第37条)。具体的には、1日8時間、1週40時間のいずれかを超えたら時間外の割増賃金を支払う必要があります。なお、会社等で特に定めがない場合は、週の労働の時間は日曜日から起算することになっています。
そして、一般に「時間外労働」と表現している多くは、この時間外の割増賃金の対象になる法定労働時間を超える労働時間を指しています。
しかし、時間外労働と呼ぶものには、もうひとつあり、企業ごとに就業規則等で定めた所定労働時間を超えて労働を行わせる時間で、所定時間外労働や法定内時間外労働などと呼ばれています。
例えば、所定労働時間が7時間の企業で8時間の労働を命じた日は、法定労働時間の8時間を超えていないので、その週に40時間以上働かせなければ、労基法が定めた割増支払義務は発生せず、所定時間を超える労働が1時間発生しているだけです。
ただし、この例のケースで、基本給の額に所定時間外労働分が含まれていなのであれば、1時間分の賃金の支払い義務があります。
話が混乱しそうですが、以後は法定労働時間を超える労働である「法定時間外労働」について話を進めていきます。
2. 三六協定(さぶろくきょうてい)
そもそも1日は8時間等の労基法が定めた法定労働時間がありますから、企業は原則として、法定の労働時間を延長した労働(以下、単に法定時間外労働といいます)をさせられませんが、労基法は例外を認めており、使用者は過半数代表との同意があれば法定時間外労働を行わせることができるとしています(労基法第36条)。
具体的には、使用者と労働者の過半数で組織する労働組合、その労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者との書面による協定をして、労働基準監督署長に届け出ることが、法定時間外労働の許される要件になります。
こうした協定と届出義務が、労基法第36条に定められていることから、協定の通称は三六協定(さぶろくきょうてい)と呼ばれています。
3. 法定時間外労働の制限は何時間か
では、三六協定は、法定時間外労働を何時間でも制限なく定められるのでしょうか。これについては、現時点では、労働時間を延長できる限度等を厚生労働大臣が定めており概要は次のとおりです。
(1)1か月で最長45時間、年間では最長360時間の法定時間外労働が可能
(2)特別条項も合わせて協定すると特別の事情が生じた時には、月数の上限があるものの(1)の時間外労働を延長することができます。
次の事業又は業務には、延長時間の限度が適用されません。
(1)工作物の建設の事業
(2)自動車の運転の業務
(3)新技術、新商品等の研究開発の業務
(4)厚生労働省労働局長が指定する事業または業務
詳しくは、「時間外労働の限度に関する基準」という厚生労働省のリーフレットで確認できます。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf
4. 三六協定を超えて労働させた場合
三六協定を超えて長時間の法定時間外労働をさせた結果は、複数の問題が生じますから、適切な仕事の指示や担当配分と労働時間管理が必要です。いくつか列挙してみますが、相互に悪影響を及ぼす懸念もあります。
・労働基準法の違反、コンプライアンス問題
・社員の健康面に影響を与える
・生産性の低下
*記載内容は、掲載時点の法令等に基づいております。今後の改正動きにご注意ください。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2016/11/30