アフターコロナの働き方・マネジメント・人事評価制度
約2か月間に及ぶ緊急事態宣言が解除され、通勤する人も増え、世の中は元通りになっていくのでしょうか。サラリーマンはこの期間中、テレワーク、在宅勤務など、新しい働き方を強いられました。政府がお願いする「新しい働き方」の継続も、テレワークに代表されるリモート型の働き方を検証して評価していかねばなりません。しかし、この時点でも一定の方向性は見えてきたかと思います。
自分の会社でも実践し、周囲の体験者の話を総合しても、便利で快適だったという感想です。そんなに不便はなかった。毎朝の通勤時間がいかに無駄だったか実感した。目の前で管理されたり、人に時間を取られたり、気を使ったりということが無く、自分のペースで働けることで生産性を下げることにはならない。与えられた仕事に対しては十分成果を上げていた。人によっては、自分の得意、不得意が明確に理解できたという方も多いだろう。多くの気づきを与えることになった実験期間と言えます。
日本のホワイトカラーの生産性はOECD36か国中21位。G7の中では最下位と言われます。古くからの慣習がはびこっている日本の組織では、抜本的な改革が難しかった。今回の取り組みは、多くの可能性を提示してくれたことと思います。人事組織コンサルタントとして、新しい働き方、会社との関係を以下に3つ提唱します。
① 仕事観が変わる
個人のセルフマネジメントが常識となり、「管理されているから働く」から、「個人が責任感持って働く」に意識が替われば、マネジメントコストが少なくなります。会社と個人が信頼関係、自由と自己責任の関係になれば、子ども扱いから大人の関係になり、自己完結する仕事は生産性が上がるはずです。実際、家事・子育て・介護の必要な方も自宅で仕事時間を創り出し個人の責任を果たしてもらえれば、会社に通勤して、ぼやっと机に座っている(時間で給与をもらっている)社員より数倍生産性の高い働き方になると考えられます。「収入2割減時代を迎える」という危機感があります。与えられた仕事を的確にこなすという、会社と個人がデジタルでつながる関係においては、帰属意識が薄まり、独立事業主が増え、副業、兼業がさらにやりやすくなる環境となるでしょう。
② 人事評価制度が変わる
リモート型の働き方が共存すると、「あいつ頑張っているから」「人の面倒をよく見ている」「まじめ」などの目に見えない、能力や情意、姿勢などの主観的な評価は排除されます。評価項目は、職務(ミッション)の重さと成果中心にシフトせざるを得ません。日本の慣習だった人本主義からアメリカ型の職務主義へのシフトが起こってきます。残業を含む時間管理のウエイト(重要さ)も低くなるでしょう。目に見えないところで仕事をしているわけですから、生産性がより強く求められます。
③ マネジメントが変わる
直接的に接触、目を配る管理からデジタルツールで大半が管理できるようになると、スパンオブコントロール(統制範囲・人数)が変わり、組織はピラミッド型から文鎮型に移行し、調整役としての現状の課長がいらなくなります。部長が20名~30名見ることができるようになります。元々そうだったかもしれません。定期面談やミッション、優先順位を確認するのは管理職として必要ですが、仕事のサポートは、先輩社員・同僚や本部の業務サポート部隊が全面的にバックアップしてくれる体制を作り補完する。心配されているメンタルケアは、直属上司よりカウンセラーやコーチが客観的・専門的にアドバイスする。人材育成についても自己学習ツールやマニュアルが充実し、課長が直接教える体制は今後少なくなっていくと考えられます。
以上、上記3つについて、自社の組織に当てはめて考えてみる価値があると思います。
【コンサルタントプロフィール】
和田一男 (株式会社ブレインパートナー 代表取締役 組織変革・営業変革コンサルタント) 北海道小樽市出身。(株)ヒューマン・キャピタル・マネジメント取締役。大学卒業後、1985年(株)リクルート入社。2000年独立し、(株)ブレインパートナー設立、代表取締役就任。経営力強化、実行力強化支援、営業力強化コンサルティング、実行機能としての組織構築、組織変革コンサルティング、人材育成、人事評価制度構築、目標管理制度運用支援を行っている。著書「30歳からの営業力の鍛え方」(かんき出版,2006年)、「ドラッカー経営戦略」(明日香出版社,2012年) |
DATE : 2020/06/03