【人事管理】改正個人情報保護法と社員の健康情報取扱い
1.改正個人情報保護法と健康情報
平成27年に改正された個人情報の保護に関する法律(以下、個人情報保護法といいます。)は、平成29年5月30日施行されています。
改正点の一つに個人情報の定義の明確化があり、社員の病歴等の健康情報は、要配慮個人情報であると定義されました。
要配慮個人情報とは、人種、信条、社会的身分、病歴等、その取扱いによって差別や偏見、その他の不利益が生じる恐れがあるため、特に慎重な取り扱いが求められる個人情報を類型化したものです。
個人情報保護法では、病歴等の要配慮個人情報は、本人の同意を得ないで取得することが原則として禁止され、本人の意図しないところでの第三者への提供がされることがないように規律が設けられました。
一方で、従来からある「法令に基づく場合」や「法令に基づく場合」に該当する場面では、本人の同意を得ないで個人情報を入手が可能であり、変更はありません。
以上のことから、社員の病歴等の健康情報は、採用時の面接時の質問や、健康診断結果にそって労務管理に配慮をするとき、または、メンタルヘルス不調社員の対応をするとき等において、厳密に扱う必要があります。そこで今回は、採用時の面談における病歴や、健康診断結果の取扱いを取り上げます。
2.採用面接時にうつ病などの既往症の有無を聞いて答えさせられるか?
過去の裁判例を見ると、企業には応募者を採用するかどうかの判断の自由があると言及した例があります。(三菱樹脂事件 最大判昭和48.12.12)
このことから考えれば、企業が、採用応募者に対して、自社で働ける状況にあるかどうかを選考基準にすることは違法ではありません。
ではたとえば、面接時に精神疾患等の既往症や現在通院や服薬をしているかどうかを質問できるのでしょうか。これについては、「企業が求める状況で働ける状況にあるかどうか」という趣旨で質問するのであれば、適切な範囲に限定されるものの質問をすることが可能となります。
しかしながら、うつ病などの既往歴があっても現在治っており、働くことに問題がなければ、質問の対象から外すべきです。
また、現在の通院の有無、医師の指導内容、服薬に関する情報は、病歴等であり、個人情報保護法の「要配慮個人情報」となりますから、情報の取得には本人の同意が必要ですし、入手した結果は差別や偏見によって本人に不利益が生じないようにしなければなりません。
想定できる運用例としては、採用予定者に担当させる職務内容を履行できる健康状態にあるかどうかを判断する目的で、本人に健康状態を質問し、回答を任意で求めることはできます。しかし、回答しないことに対して不利益扱いはできません。また本人の回答のみによらず、面接内容全般を通じて採用の可否を判断することが求められます。
3. 定期健康診断の結果を人事部は入手できるか?
労働安全衛生法は、雇い入れ時に健康診断を実施することを企業に義務付けています。企業が、雇い入れ時健康診断項目の健診結果を外部の機関から入手することは、「法令に基づく場合」に該当するため違法ではありません。
また定期健康診断項目についても、健診結果を企業が健康診断を実施した機関から入手することは、「法令に基づく場合に」に該当するため違法ではありません。
「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」では、企業が、健康診断の実施を委託する医療機関に健康診断を実施するために必要な個人データを医療機関に提供することや、健康診断の結果の記録、その結果に係る医師等からの意見聴取、結果の社員に対する通知は義務付けられているため、安全衛生法に基づく事業者の健康診断実施義務を遂行する行為として法令に基づく場合に該当するとして、本人の同意を得なくても第三者提供の制限を受けず行える。としています。
詳しくは、雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項(第2 5 (2))を参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000167762.pdf
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2017/09/27